• 不妊の原因
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2015.12.09

卵子の衝撃その① 『卵子は老化する』


⑨

 

1     卵子は年をとるが精子は年をとらない。

生殖における男女の違いとは、簡単に言えば精巣と卵巣の違いになります。

精巣は精子をつくるところです。では卵巣はどうでしょう。

「卵子を作るところ」と頭に浮かんだ方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです!!

卵巣は卵子を「保存する」ところ。卵子を作り出すことはできません。

女性は、卵子を卵巣に抱えてこの世に生まれてきます。ですから女性の年齢と同じだけ、卵子も年をとっているのです。20歳の人が排卵したらその卵子も20歳。40歳の人の卵子は40年経った卵子です

一方、男性は年をとっても精子は毎日新しく作られるので、精子は年をとりません。

精子は男性の体内で、毎日1000万個以上つくられます。

一日につくられる精子の数が、女性がもって生まれてくる卵子の数(200万個)より5倍以上も多いのです。男性は、精子をつくるもとの細胞である精祖細胞をもっています。精祖細胞は卵子と同じようにお母さんのおなかの中にいるころにつくられ、精巣の中でじっと出番がくるまで眠っています。思春期になるとホルモンの影響を受けて働きはじめ、精子をつくり出します。精子のもとなる精祖細胞は分裂を繰り返し、新しい精子をつくり続けます。精祖細胞から精子が出来上がるまで約80日、つまり製造期間は約3か月です。だからいつもフレッシュなのです。

 

2     精子より卵子のほうが重要な役割を担っている

精子の役割は、ヒトの設計図であるDNAの半分を卵子に持ち込んで、卵子のスイッチオンにして細胞分裂を開始させます。

DNAの持ち込みと、スイッチオン。精子の役割はこの二つだけです。

実は生殖において、男性はそれほど役に立ちません。

一方、卵子は、いくつかの大きな役割をもっています。まずは精子が運んできた染色体の半分と卵子自身の染色体を組み合わせ、一人前のヒトの設計図にし、受精卵をつくること。次に、一人前になった設計図をもとに、受精卵の中でどんどん細胞分裂を進めてヒトの部分をつくっていくこと。つまり、受精卵は工場のようなものです。そして三つめは倉庫の役割。卵子は、初期の発育に必要な材料や栄養をもっているからです。その材料を使いながら、受精卵は発育を進めていきます。このように、男性と女性(精子と卵子)の役割は大きく異なっています。

 

3     卵子が年をとると何が起こるのでしょう

精子と卵子ができるとき、ここでは大きな実験が行われます。どんな実験かといえば、遺伝子の組み換えがダイナミックに起こります。受精段階でダイナミックに組み換わった染色体が合体することで、同じ両親(同じ精子と同じ卵子)からいろいろな兄弟が生まれてきます。

先程、卵子は工場と倉庫の役割をしているとお話ししました。工場や倉庫が年月を経て古くなってくると、不良品をつくる率が高くなっていきます。これは専門的にいえば、遺伝子の発現、染色体分離等がうまくいかなくなるということです。そして異常な細胞の割合がだんだんと増えていきます。

少しくらいの異常ならヒトの体を組み立てることにそれほど影響はないのですが、部品の形が違っていたり、部品そのものがなかったりすれば、うまく組み立てていくことができなくなってしますのです。途中で組み立てが中断してしまうことも出てきます。早い段階で組み立てられなくなってしまえば妊娠が成立しませんし、妊娠後に組み立てが止まってしまえば流産という結果になります。これが「卵子の加齢」が原因で起こる事実です。

「なんてひどいことをいうの?」と感じる方もいるかもしれません。でもこれは、お母さんの体を守る大事な仕組みなのです。昔は高齢で妊娠・出産することは命の危険を伴うものでした。ですから、卵子が老化し減少することで妊娠しづらくし、高齢の変化から母体を守っているのです。